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2021.01.18

新型コロナウイルス感染症に対する抗NMDA受容体脳炎患者さんの注意点

 新型コロナウイルス感染症に対する抗NMDA受容体脳炎患者さんの注意点 

20204月の緊急事態宣言を経て小康状態であった新型コロナウイルス感染症COVID-19は冬とともに第3波となり患者数の増加が認められます。抗NMDA受容体脳炎で治療を受けている患者さん療養している患者さんには様々な不安があるかと存じます。重症化のリスクや免疫抑制薬の使用,ワクチンについて現時点でわかっていることを説明します。

1.重症化のリスク

65 歳以上の高齢者,基礎疾患として悪性腫瘍,慢性閉塞性肺疾患,慢性腎臓病,糖尿病,高血圧,脂質異常がある人,肥満(BMI 30以上)を有する場合は,COVID-19が重症化する割合が高い傾向にあります。しかし,抗NMDA受容体脳炎においてCOVID-19にかかるリスク,重症化リスクが高まることは報告されていません。したがって,手洗いやマスクの使用,3蜜を避けるなど厚生労働省や保健所などの基本方針や提言に従って,患者さんご本人ご家族も含め感染対策を行ってください。

2.免疫抑制薬の使用

COVID-19流行当初から,ステロイドや免疫抑制薬を使用している方は重症化のリスクが高くなるとの指摘があり注意は必要ですが,まず,ステロイドや免疫抑制薬の治療を受けている抗NMDA受容体脳炎や免疫性神経疾患の患者さんが,新型コロナウイルスに感染しやすくなる(かかった場合の重症化リスクではなく)というデータはありません。また,抗NMDA受容体脳炎ではありませんが,免疫性神経疾患である多発性硬化症を持ちCOVID-19にかかった患者さんの解析結果(海外データ)では,高齢者,糖尿病や肥満など上記のリスクを有する人で重症化する割合が高かったですが,免疫抑制薬の治療の有無は重症化に関連がみられませんでした。ステロイドや免疫抑制薬を減量・中止すれば,抗NMDA受容体脳が再発や悪化する恐れがあるため,原則として同じ用量で治療を継続し,患者さんは感染リスクの高い状況を避けるための一般的な注意事項をお守りください。最近ではCOVID-19の重症肺炎に対して過剰な炎症反応を抑える目的でステロイドや強力な免疫抑制薬による治療が有効であることも報告されています。しかし,COVID-19 に対する免疫抑制薬の有効性についてはCOVID-19の重症度や患者さんの基礎疾患などの状態により条件が異なります。もしCOVID-19にかかった場合は診療を受けている医療機関の指示に従ってください。

 3.ワクチン

日本国内でも早ければ20213月頃からワクチン接種が開始されると報道されています。ワクチン接種順位として医療従事者と高齢者さらに基礎疾患を有する者が優先されます。ワクチンはインフルエンザワクチンに近いタイプになりますので,皆さんに受けてもらってよろしいですが,新型コロナウイルスに対しては初めてのワクチンとなりますので,効果と安全性については不明点も残ります。副作用ゼロのワクチンはありませんので,国民に対してワクチンの副作用リスクより効果が十分に勝っていると判断されることによりワクチン接種が始まりますし,先行している海外のデータを参考に国内でも進行すると思われます。また,ワクチン接種はあくまでも予防です。ワクチンの接種が始まっても,これまで行ってきた基本的対策を年単位で続ける必要もあると考えられます。

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