抗NMDA受容体脳炎とは?
抗NMDA 受容体脳炎は、脳神経細胞に存在し神経情報伝達の役割を持つグルタミン酸受容体であるNMDA受容体に対してできた抗体により発症する自己免疫性脳炎です。患者さんは若年女性を中心に小児から成人と幅広く、症状は発熱と興奮・幻覚・妄想など精神病症状が必発で、その後に無反応状態、昏睡、けいれんや全身の不随意運動を示します。自発呼吸が減弱し人工呼吸器管理が必要になることもあり、女性患者の約半数に卵巣奇形腫を合併します。ステロイド、免疫グロブリン静注療法、血漿交換療法、シクロホスファミドやリツキシマブの免疫抑制薬による免疫治療が推奨され、卵巣奇形腫合併例では早期外科切除も有効です。症状が遷延して数ヶ月以上の長期間の治療を要することが多く、早期治療が重要と考えられています。
日本大学医学部内科学系神経内科学分野 教授 中嶋 秀人